Excelでの在庫管理、どこまでなら大丈夫? システム化を考える境界線

「今までExcelで管理できているから、このままでいいのでは?」
アパレル企業の業務改善についてお話をしていると、Excelでさまざまな情報を管理されている会社に出会います。
Excelは非常に便利なツールです。
私たちも、**「Excelをやめて、何でもシステム化すればいい」**とは考えていません。
むしろ、Excelだからこそ使いやすい業務もあります。
一方で、会社の成長や取扱商品の増加によって、いつの間にかExcelが「便利な道具」から「業務を複雑にする原因」に変わっていることがあります。
今回は、実際にアパレル企業の現場で見てきた事例から、Excel管理を続けてもよい場合と、システム化を考えた方がよい境界線について考えてみます。
Excelが「簡易システム」になっている
実際のお客様で、受注から在庫までをExcelで管理しているケースがあります。
まず、受注が入るとExcelの受注台帳に登録します。
商品を発注・生産したら生産数を追加。
商品が入荷するたびに入荷数量を在庫として計上します。
そして、受注の優先順位が高いものから順番に商品を出荷していきます。
考え方としては、
生産・入荷した数量 ? 受注数量 = フリー在庫
です。
フリー在庫とは、すでに受注で押さえられている商品を除いた、まだ販売できる在庫のことです。
ここまでExcelで管理できれば、単なる表計算ではありません。
Excelが簡易的な受注・生産・在庫管理システムとして機能している状態です。
これで問題なく運用できている間は、Excelは非常に便利です。
ところが、業務が大きくなってくると少しずつ問題が出てきます。
問題① 複数人が同じExcelを触るようになる
最初は一人の担当者が管理していたExcelでも、受注が増えてくると複数人で更新するようになります。
すると、
「誰がどこまで入力したのか」
「この数字は最新なのか」
という問題が起こりやすくなります。
さらに、受注後にお客様からキャンセルや数量変更の連絡が入ることもあります。
販売管理システム側は変更した。
しかし、Excelの受注台帳を変更していなかった。
このように、同じ情報を複数の場所で管理すると、どこか一つの修正漏れが数字のズレにつながります。
問題② Excelと販売管理システムへの「二重入力」が始まる
私たちが一つの境界線だと考えているのが、
Excelと販売管理システムの両方へ同じ情報を入力している状態
です。
受注は販売管理システムへ入力する。
その後、管理用のExcelにも同じ受注を入力する。
入荷したら販売管理システムへ入力し、Excelも更新する。
これでは一つの業務に対して、入力作業が二回発生します。
二重入力は作業時間が増えるだけではありません。
片方だけ修正したり、片方への入力を忘れたりすれば、Excelとシステムの数字が合わなくなります。
どちらが正しい数字なのか分からなくなることの方が大きな問題です。
問題③ 品番×カラー×サイズが増えると入力ミスも増える
アパレルの商品管理には、独特の難しさがあります。
同じ品番でも、
品番 × カラー × サイズ
によって、それぞれ別の在庫として管理する必要があります。
例えば同じ商品でも、
Mサイズの黒とLサイズの黒は別在庫です。
カラーが違えば、さらに管理する数量は増えていきます。
Excel上でこれらを入力していると、サイズやカラーの欄を間違えて入力することがあります。
商品数が少ないうちは人の目でも確認できます。
しかし、品番・カラー・サイズの組み合わせが増えていくほど、Excel上で正確に管理する負担も大きくなっていきます。
問題④ フリー在庫が実際の在庫と合わなくなる
受注台帳から計算したフリー在庫と、実際に存在する在庫が合わなくなることもあります。
原因は一つではありません。
受注のキャンセルや数量変更がExcelに反映されていなかったり、入荷情報の更新が遅れていたり、販売管理システムだけを変更してExcelが更新されていなかったり。
小さなズレが積み重なっていきます。
すると、本来は販売可能な数量を把握するためのフリー在庫なのに、
「このExcelの在庫、本当に合っている?」
となってしまいます。
在庫管理表の数字を信用できなくなったら、Excel運用を見直す一つのサインだと思います。
問題⑤ 棚卸で膨大な時間がかかる
Excelと販売管理システムを併用していると、問題が一気に表面化するのが棚卸です。
例えば、
帳簿上の在庫はExcel
一方、
実棚の結果は販売管理システム
という状態です。
棚卸をすると、この二つを比較して差異を確認しなければなりません。
合わなければ、
「Excelが違うのか?」
「販売管理システムが違うのか?」
「どの受注が違うのか?」
と原因を探していきます。
品番×カラー×サイズで大量の商品を管理している会社では、この差異確認だけでも膨大な時間がかかります。
日常業務では何とかExcelで運用できていても、棚卸のたびに大変な作業が発生しているのであれば、それもシステム化を考えるタイミングです。
では、Excelは使わない方がいいのか?
そうではありません。
Excelには、業務システムにはない大きなメリットがあります。
その一つが自由度の高さです。
販売管理システムでは、商品を入力するために商品マスタなどの事前登録が必要になることがあります。
マスタとは、商品や取引先など、システムで使用する基本情報のことです。
Excelなら、その場で新しい行を追加してすぐに管理を始められます。
修正も簡単です。
システムでは、
受注 → 入荷 → 売上
など複数のデータが関連しているため、簡単に過去データを変更できないことがあります。
関連するデータを取り消してから修正しなければならないケースもあります。
Excelならセルを直接修正できます。
さらに、
「お客様から数量変更の連絡あり」
「この商品は○○日に入荷予定」
といったコメントも、その場で自由に書き込めます。
こうした柔軟性や分かりやすさはExcelの大きな長所です。
Excelからシステム化して何が変わったのか
実際にExcelで行っていた管理を販売管理システム側へ移すと、いくつかの変化がありました。
受注を入力すればフリー在庫が分かる
受注をシステムへ入力すれば、その情報を使ってフリー在庫を計算できます。
Excelへ同じ受注をもう一度入力して、フリー在庫を計算する必要がありません。
入荷すれば生産残・受注残が更新される
入荷情報を入力すれば、生産残や受注残などの関連する情報も更新できます。
一つのデータを、それぞれの管理表へ転記する必要がなくなります。
棚卸の差異確認が楽になる
帳簿在庫と実棚を同じシステム上で管理できれば、Excelと販売管理システムを突き合わせる作業を減らせます。
結果として、棚卸にかかる時間も短縮できます。
営業担当者が自分で在庫を確認できる
Excelの在庫表を管理している担当者に確認しなくても、営業担当者自身がシステムから在庫を確認できます。
そして、もう一つ大きな変化があります。
「担当者の在庫」から「会社の在庫」になることです。
それまで担当者ごとにExcelで管理していた在庫情報をシステムに集約すると、同じ情報を全社で共有できるようになります。
Excelをやめる基準は「商品数」だけではない
「商品が何点を超えたらシステム化した方がいいですか?」
と単純に数字だけで判断するのは難しいと思います。
むしろ、私たちは次のような状態になっていないかを見ることが重要だと考えています。
- 複数人が同じExcelを更新している
- 品番×カラー×サイズが増えてきた
- Excelと販売管理システムへ二重入力している
- Excelのフリー在庫を信用できなくなってきた
- 棚卸の差異確認に膨大な時間がかかっている
- 在庫情報が担当者ごとのExcelに分散している
一つでも当てはまれば、すぐにExcelをやめるべき、というわけではありません。
しかし、当てはまる項目が増えてきたら、Excelが便利だから使っているのか、それともExcelから抜け出せなくなっているのかを一度考えてみてもよいと思います。
Excelとシステム、どちらか一つにする必要はない
ExcelにはExcelの良さがあります。
システムにはシステムの良さがあります。
大切なのは、すべてをシステム化することではありません。
受注・入荷・在庫など、会社全体で共有すべき「正しい数字」はシステムで一元管理する。
その一方で、
ちょっとしたメモ、集計、分析など、自由に扱いたい情報にはExcelを活用する。
それぞれの得意なところを使い分けることが重要です。
Excelは非常に便利な道具です。
だからこそ、業務が成長したときに、
「このExcelは、今でも私たちの仕事を楽にしてくれているだろうか?」
と一度立ち止まって考えることが、システム化を検討する最初の一歩なのかもしれません。
インネット株式会社では、アパレル企業の現場で実際に起きている課題をもとに、販売管理・在庫管理・受発注・EC連携・業務自動化などについて発信しています。
次回は、**「品番×カラー×サイズ管理が複雑になる理由」**について取り上げます。
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