「去年100枚売れたから今年も100枚」は正しい?

アパレルの生産数の決め方
「去年100枚売れたから、今年も100枚作ろう」
一見すると、とても合理的な判断に見えます。
販売管理システムには前年の販売実績が残っています。
前年100枚売れたのであれば、今年も100枚。
しかし、アパレルの商品企画や生産では、販売数量だけを見て次の生産数を決めると、判断を間違えることがあります。
その100枚は、いつ売れたのでしょうか。
いくらで売れたのでしょうか。
どのカラー、どのサイズが売れたのでしょうか。
そして、シーズン終了時に在庫はどれだけ残っていたのでしょうか。
今回は、販売管理システムに蓄積されたデータを、「過去を見るためのデータ」から「次に何を作るかを考えるデータ」へ変えることについて考えてみます。
来年の生産数は、どうやって決めている?
実際の現場では、次シーズンの生産数量を決めるときに、いくつかの情報を使います。
例えば、
- 前年の販売数量
- 前年の残在庫
- 展示会での受注数量
- 担当者の経験や勘
などです。
もちろん、前年の販売実績は重要です。
しかし、
「前年100枚売れた」
という数字だけでは、その商品の本当の評価はできません。
「100枚売れた」の中身を見る
アパレルでは、プロパー(通常価格)のまま商品をすべて売り切ることは、そう多くありません。
シーズン後半になればセールを行い、バーゲン価格で販売することがあります。
例えば、商品Aと商品Bがどちらも前年100枚売れたとします。
数字だけ見れば、
商品A:100枚販売
商品B:100枚販売
なので、同じように見えます。
しかし、
商品Aは、ほぼ通常価格で100枚販売。
一方、
商品Bは、シーズン後半に大きく値段を下げて100枚販売。
だったとしたらどうでしょうか。
同じ「100枚販売」でも、その意味は大きく違います。
「何枚売れたか」だけでなく「いくらで売れたか」
そこで重要になるのが、バーゲン価格です。
例えば前年100枚売れたからといって、
「100枚の需要があった」
とは限りません。
価格を下げたことで売れた数量が多ければ、翌年も同じ数量を生産すると、またシーズン後半に値下げが必要になる可能性があります。
販売実績を見るときには、
販売数量だけではなく、どの価格帯で売れたのか
を見る必要があります。
つまり販売管理システムに残っている、
「100枚売れた」
という結果だけを見るのではなく、
「その100枚を、どのように売ったのか」
まで見ることが大切です。
前年の残在庫も忘れてはいけない
もう一つ重要なのが、前年から残っている在庫です。
前年100枚売れたから今年100枚生産する。
しかし、前年の商品が20枚残っていたらどうでしょうか。
その20枚を今年も販売できる商品であれば、新たに100枚生産する必要があるとは限りません。
販売実績と残在庫をセットで考える必要があります。
また、展示会ですでに受注が入っている商品であれば、その数量も生産計画を考える重要な情報になります。
このように実際の生産数は、
前年販売数だけで決められるものではありません。
さらに「何色を何枚作るか」を決める
仮に、
「今年はこの品番を100枚作ろう」
と決まったとします。
アパレルでは、ここで終わりではありません。
次に、
どのカラーを何枚作るか
を決める必要があります。
例えば前年の販売構成が、
黒:50%
紺:30%
白:20%
だったとします。
前年の実績を参考にすれば、100枚生産する場合、
黒:50枚
紺:30枚
白:20枚
という生産計画を考えることができます。
これがカラー構成比です。
カラーを決めたら、次はサイズ
さらにカラーごとにサイズを決めます。
例えば黒を50枚生産するとします。
前年のサイズ構成比が、
S:10%
M:40%
L:40%
LL:10%
なら、
S:5枚
M:20枚
L:20枚
LL:5枚
という配分を考えることができます。
つまり、アパレルの商品企画では、
品番の総生産数量を決める
↓
カラー構成比で配分する
↓
サイズ構成比でさらに配分する
というところまで考える必要があります。
「今年は100枚作る」という一言の裏側には、これだけの判断があります。
最後はやっぱり「人の経験と勘」
ここまで販売データを分析しても、最後は人が判断することが多いと思います。
なぜなら、過去のデータだけでは分からないことがあるからです。
例えば、
「今年はこのカラーを強く売りたい」
「展示会でこの商品への反応が良かった」
「今年はこのデザインが流行りそう」
といった情報です。
こうした情報は、前年の販売実績だけでは判断できません。
だからこそ、担当者の経験や勘も重要です。
私は、経験や勘をなくす必要はないと思っています。
むしろ、
データで判断できる部分はデータに任せ、人にしか分からない情報を人が加える。
この形が理想ではないでしょうか。
ここまでをAIが計算したら?
ここからは、今後できるようにしたいことです。
販売管理システムには、これまで何年も蓄積してきたデータがあります。
例えば、
前年販売数
プロパー・バーゲン価格での販売実績
前年残在庫
展示会受注数
カラー構成比
サイズ構成比
などです。
これらをAIが分析して、
「今年はこの品番を120枚生産することを提案します」
黒:60枚
紺:40枚
白:20枚
さらにカラーごとのサイズ構成まで提案する。
ここまでAIが準備してくれれば、担当者はゼロから数量を考える必要がなくなります。
AIの提案を見たうえで、
「今年は黒を強化したいから10枚増やそう」
「このカラーは今年で廃番だから作らない」
「大口案件の話があるので、このサイズを増やそう」
と、人が修正して最終決定する。
AIが人の代わりに商品企画をするのではなく、判断するためのたたき台を作るイメージです。
生産した後も予測は続く
そして、私たちがさらに重要だと思っているのはここからです。
初回の生産数量を決めたら、販売予測は終わりではありません。
実際に販売が始まれば、予想と違う動きをする商品が必ず出てきます。
例えば、
黒のMサイズだけ、想定以上のスピードで売れている。
こうした商品を担当者が早く見つけられれば、追加生産を検討できます。
しかし、100品番、さらにカラー×サイズまで含めたSKU(在庫管理の最小単位)を毎日人が確認するのは簡単ではありません。
そこでAIが売れ行きを監視します。
「売れています」ではなく「追加生産した方がいい」まで
AIが単に、
「黒・Mがよく売れています」
と教えてくれるだけでは、まだ人がその後を考えなければなりません。
理想はもう一歩先です。
例えば、
「黒・Mの販売速度が計画を上回っています。このペースでは3週間後に欠品する見込みです。」
「追加生産30枚を提案します。」
というところまで提案する。
担当者は、その内容を確認して追加生産するかどうかを判断します。
さらに「生地が何m必要か」まで考える
アパレルの生産では、追加生産する数量だけ決めても商品は作れません。
商品を作るための生地が必要です。
例えばAIが30枚の追加生産を提案したのであれば、
その30枚を作るために何mの生地が必要なのか
まで計算する必要があります。
現在の生地在庫で足りるのか。
すでに発注している生地があるのか。
不足するなら、いつまでに何m発注する必要があるのか。
理想的には、
販売速度を監視
↓
欠品時期を予測
↓
追加生産数量を提案
↓
必要な生地量を計算
↓
生地の発注数量・タイミングを提案
というところまでつなげたいと考えています。
販売管理システムに眠っているデータを「次の一手」に使う
販売管理システムには、たくさんの過去データが蓄積されています。
しかし、そのデータを、
「去年何枚売れた?」
と確認するだけではもったいないと思います。
これからは、
去年何枚売れたか
ではなく、
今年何枚作るべきか。
さらに、
いつ追加生産すべきか。
生地をいつ、何m発注すべきか。
という次の行動を考えるためのデータとして活用できるはずです。
「記録するシステム」から「次を提案するシステム」へ
これまでの販売管理システムは、
受注した。
発注した。
仕入れた。
売れた。
在庫が残った。
という、起きたことを記録する役割が中心でした。
もちろん、それはこれからも必要です。
しかしAIを組み合わせることで、
過去を記録するだけではなく、未来の行動を提案する
ことができるようになると思います。
AIが、
「このままだと欠品しそうです」
と問題の芽を見つけ、
「30枚追加生産した方がよいと思います」
と提案し、
さらに、
「そのためには生地を○m、○日までに発注する必要があります」
というところまで考える。
そして最後は、人が判断する。
AIがデータから次の一手を提案し、人が経験や市場の情報を加えて決定する。
販売管理システムに蓄積されたデータを、そこまで活用できるようにする。
これが、これから私たちが考えていきたい販売管理システムの一つの形です。
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