「納期が早い商品から作ればいい?」アパレルの生産順位が難しい理由

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――AIが「今日、何から作るか」を考える時代へ

前回の記事では、

「去年100枚売れたから、今年も100枚作る」は正しいのか?

というテーマで、過去の販売実績から次の生産数量を考える話を書きました。

では、何を何枚作るかが決まったら、次はどうするのでしょうか。

複数の商品を同時に生産している場合、

「今日、何から作るのか?」

を決めなければなりません。

単純に考えれば、

「納期が早い商品から作ればいい」

となりそうです。

しかし、実際のアパレル生産ではそれほど単純ではありません。

今回は、アパレルの生産順位をどう決めているのか、そしてこの判断にAIを活用できないかを考えてみます。


納期が一番早くても、生産できないことがある

例えば、3つの商品を生産するとします。

商品A:納期まで2日
商品B:納期まで4日
商品C:納期まで7日

納期だけを見れば、当然Aから生産することになります。

ところが、商品Aを作るために必要なファスナーがまだ入荷していなかったらどうでしょうか。

納期は一番早い。

しかし、商品を完成させることができません。

この場合、商品Aはいったん生産順位から外して、必要な資材が揃っている別の商品を先に生産することがあります。

つまり、

「納期が早い=生産順位が高い」

とは限らないのです。


「資材が揃っている」とは?

服を作るために必要なのは、生地だけではありません。

商品によって違いますが、例えば、

  • ボタン
  • ファスナー
  • 芯地
  • 袋地
  • 下げ札

など、さまざまな資材や付属品が必要です。

生地がある。

ボタンもある。

芯地もある。

袋地もある。

下げ札もある。

でも、ファスナーだけがない。

この状態では商品を完成させることができません。

「ファスナーは3日後に入荷予定だから、それまでにできるところまで作っておこう」

という方法も考えられますが、実際の運用では、いったん生産順位から外して、すべての資材が揃っている別の商品を先に生産するケースがあります。

工場やラインを止めないためにも、作れる商品を効率よく回していく必要があるからです。


工場が空いているかも重要

資材が全部揃っていれば、すぐ生産できるとも限りません。

次に確認するのが、工場や生産ラインの稼働状況です。

すでに別の商品を生産しているラインへ、さらに商品を入れることはできません。

そのため生産担当者は、

納期

だけではなく、

資材の入荷状況

そして、

工場・ラインの稼働率

まで確認しながら、生産順位を決めています。

つまり生産順位は、

「いつまでに必要か」

だけではなく、

「今、本当に作れるのか」

まで見なければ決められないのです。


さらに、社内独自の優先基準もある

そして、もう一つあります。

企業によっては、取引状況などをもとにした社内独自の優先基準を持っている場合があります。

これは会社内部の判断基準なので、単純にシステム画面へ表示できるものばかりではありません。

同じ納期の商品が二つあったとしても、

「どちらを先に生産するべきか」

には、数字だけでは表現しにくい会社独自の判断が入ることがあります。

だからこそ、生産順位を決める仕事は、経験のある生産担当者に頼る部分が大きくなります。


生産担当者は毎日「並べ替え」をしている

実際の現場では、生産担当者が、

納期
資材の入荷状況
工場・ラインの稼働率
社内の優先基準

を確認しながら、

「今日は何から作るか」

を並べ替えています。

一度決めれば終わりではありません。

昨日は資材が足りなかった商品に、今日ファスナーが入荷するかもしれません。

工場の進捗が予定より早く、ラインが空くかもしれません。

逆に、予定していた資材の入荷が遅れることもあります。

状況が変われば、生産順位も変えなければなりません。

つまり、生産計画は固定されたスケジュールではなく、毎日の状況によって変化するものなのです。


この判断をAIに手伝わせたら?

ここからは、私たちが今後実現したいと考えている仕組みです。

販売管理システムや生産管理システムには、

受注数量
納期
資材の発注状況
資材の入荷状況
生産状況

などの情報があります。

さらに工場やラインの稼働状況も分かれば、AIがこれらの情報を確認して、

「今日、何から生産すべきか」

を提案できるのではないでしょうか。

例えば毎朝、AIがこんな提案をします。


本日の生産優先順位

1位:商品A
納期まで2日。必要資材はすべて入荷済み。ラインAで生産可能。

2位:商品C
納期まで4日。必要資材はすべて入荷済み。社内優先度を考慮。

3位:商品B
納期は最も近いが、ファスナーが未入荷のため生産保留。10月9日入荷予定。


重要なのは、単に順位を表示するだけではありません。

「なぜ、この順位なのか?」

までAIが説明することです。

理由が分かれば、生産担当者もAIの提案が妥当なのか判断できます。


資材が入荷したら、AIがもう一度考える

さらに重要なのは、状況が変わったときです。

例えば、先ほど生産保留になっていた商品Bのファスナーが入荷したとします。

するとAIが、

商品Bの必要資材がすべて揃いました。

納期まで2日のため、生産順位を3位から1位へ変更することを提案します。

と知らせる。

生産担当者がすべての商品を毎回確認しなくても、状況が変わった商品をAIが見つけて知らせるわけです。

これは、これまで人が行っていた「毎日の並べ替え」を大きく変えられる可能性があります。


でも「順位を教えるだけ」では仕事は終わらない

ここで終わってしまうと、AIは便利な分析ツールでしかありません。

AIが、

「商品Bを最優先で生産してください」

と提案したあと、生産担当者が別のシステムを開いて、工場へ連絡して、生産指示を作成する。

これでは、まだ人の作業が多く残っています。

私たちが目指したいのは、その先です。


AIの提案から、工場・ラインへの生産指示までつなげる

理想的には、

AIが受注・納期を監視
↓
資材の入荷状況を確認
↓
工場・ラインの稼働状況を確認
↓
社内の優先基準を加味
↓
生産順位を提案
↓
なぜその順位なのか説明
↓
生産担当者が確認・承認
↓
工場・ラインへ生産指示

というところまで、一つの流れにしたいと考えています。

AIが勝手に工場へ指示するのではありません。

最終判断は人が行う。

しかし、人が「実行してよい」と判断した後の定型的な処理は、システム側で進める。

そうすれば、生産担当者は、

情報を探す仕事

や、

毎日順番を並べ替える仕事

から、

AIの提案を確認し、判断する仕事

へ変わっていきます。


AIは「答えを出す」のではなく「判断すべきことを見つける」

AI活用というと、

「人の代わりにAIが全部決める」

というイメージを持たれることがあります。

しかし、私たちは少し違うと考えています。

生産担当者には、これまで積み上げてきた経験があります。

工場の特徴も知っています。

得意先との関係も知っています。

数字だけでは判断できないこともあります。

だから、その判断まで全部AIに任せる必要はありません。

AIには、

膨大な情報を監視して、今判断すべきものを見つけてもらう。

そして、

「私はこう考えます。理由はこれです」

と提案してもらう。

最後に人が判断する。

この役割分担が現実的ではないかと思います。


「何枚作る?」の次は「今日、何から作る?」

前回の記事では、過去の販売実績やバーゲン価格、カラー・サイズ構成比などから、

「次に何枚作るべきか」

をAIに提案させる話を書きました。

しかし、生産数量を決めただけでは商品は完成しません。

次に必要なのは、

「今日、何から作るのか?」

という判断です。

そして、その判断には、

納期・資材・工場・ライン・社内の優先基準

など、多くの情報が関係します。

これまで生産担当者が頭の中で行ってきた判断を、販売管理・生産管理に蓄積されたデータとAIで支援する。

さらに、承認された判断を実際の工場・ラインへの生産指示までつなげる。

AIが、

監視する。
見つける。
提案する。

人が、

判断する。

そしてシステムが、

実際の仕事を動かす。

そんな仕組みができれば、AIは単なる分析ツールではなく、現場の仕事を前へ進める存在になっていくのではないでしょうか。


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